お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「これでいい。暫く水に浸けるなよ。それから明日も見せに来い」


そう言うとカルテを書き終わったのか、さっさと椅子を立ち上がって出て行こうとする。



「あ…ありがとうございました!」


診察台から身体を起こしてお礼を言うと、ちらっと振り向いたドクターはニヤリと笑って___



「お大事に」


そう言う顔が普通にカッコ良くて胸がキュンとした。

まともに話せるんじゃん!と言いたくなって、思わず目を見開いたまま見送る。



「大丈夫ですか?」


原さんがボンヤリしてる私に声を掛けてきた。
ドクターに見惚れてましたとも言えず、元気な声で「はい!」と返事した。



これが口が悪いと有名なドクター、藤田 新さんとの出会い。
ツイてない日常が更に混乱しだす前の出来事。


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