お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「よし、終わり」


そう言うとドクターの手から注射針が離れ、足を押さえていた原さんも離れた。


「薬が効いてくるまで少しこのままで居て下さい」


そう言うと治療の準備を始めだす。
ドクターは診察台に背中を向け、デスクでカルテを作り出した。


白衣を着た背中は大きくて広かった。
真っ直ぐに伸びた背筋にさっきまでの様子とは違うものを感じて、少しだけ悔しい思いを覚える。


(聞き捨てならない言葉を言わなければパーフェクトなのに)


イケメンでドクターで身長も高い。
言うことなしのハイスペック性が揃ってる筈なのに。


くるっと椅子を回転させたドクターにビクッとした。
自分の考えてることが伝わったのかと勘違いした_。



「麻酔は効いてきたか」


再び手袋をはめて、トントンと膝の上を叩く。
平気そうな顔をしてる私を確かめ、大丈夫そうだな…と判断して治療を開始した。


先ずはイソジンで消毒。
その後はピンセットで張り付いたアスファルトの粉を取り除いていく。

それから抗生剤入りの薬を塗り付け、ガーゼとテープで保護した後は、原さんが包帯をグルグルと巻き付けて固定してくれた。


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