お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「あんた、よほど診療時間外に来るのが好きなんだな」


趣味か?とディスるドクターは、しよーがねーと聞こえるように囁いてる。


「残念ながらそんな趣味はありません」


ケガをしたのは不可抗力です。
そう言いたいけど、余計な一言を言って機嫌を損ねてもいけない。


「まだ看護師も来てないんだよな。来るまで少し待てば?」


「そんなの地獄です!何とか早くお願い!」


敬語も吹っ飛んでしまう。
イケメンドクターは眉を跳ね上げ、やれやれ…と諦めつつ白衣を身に付けて手を洗った。

ご丁寧に何十秒間も水を出し続けて洗い、終わった後はハンドペーパーを数枚引き出し、水気がすっかり無くなるまで拭き上げる。


「どれ、タオルを除けて見せろ」


デスクの側にある回転椅子に戻って来るなり命令。
ヤダなぁ…と呟きながらもそろっとハンドタオルを除いた。


切ってから押さえ続けてたからだろうか、出血は止まってるかの様に見えたけど__


「ゲッ!また出てきた!」


ペロンと剥けた皮の隙間からゆっくりと滲み出てくる。

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