お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
勘弁してよ〜!と泣きたくなる私を尻目に椅子から立ち上がったドクターは、窓際に置いてあるストッカーから器具をガシャガシャと取り出してる。

その後ろ姿が不機嫌そうに見えるから何も言えず、私は滲み出てくる出血を手に持ったハンドタオルで押さえた。


我ながらどうしてこんなにもツキがないんだ。

先週も財布を無くしたり、上の階に住んでる人が水道の栓を壊して脱衣所が水浸しだったり…とツイてないことが続いてたのに。


(今週はとうとう流血騒ぎ。来週には私、確実に死ぬかも…)


覚悟を決めておこうと思った時、振り向いたドクターが銀色のトレイに昨日と同じ物を乗せてやってきた。


「えっ!?麻酔ですか!?」


仰け反りながら逃げ出しそうになる自分にドクターの冷めた目線が止まる。


「そうだ。皮を縫い付けんといけんからな」


「縫い付ける?縫うんですか!?」


「ああ、その方が早く治る」


最近はテーピングで固定する方法もあるんだけどな…と言う人に、是非そちらでとお願いしたが__


「駄目だ。俺は縫う方が好きだ」


サド!絶対にサドだ!


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