お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
やっちゃんというのは中学時代の藤田くんのニックネームだ。
特に仲の良かった子達だけがそう呼んでて、私みたいなその他大勢のクラスメートは「藤田くん」と呼んでいた。



『なぁんだ、つまらない』


そうボヤくと一人の同級生が……


『波南が手も足もケガしてたって心配してたよ』


『手と足!?』


『波南ってば、何したの!?』


『殴り合い?』


『何でさ』


する訳ないでしょー!と送ると、じゃあ何で?と返ってくる。


「うーん」


ここで事実を知らせるとバカにされそうだな。
でも、嘘を吐いたところで仕様もないし。


『実は木の根っこに足を引っ掛けて転んだ』


『えっ!?』


『痛そー』


『ついでに翌日グラスで手を切った』


『うわー』


『サイアクじゃん』


『そんでもって手は十針も縫われたよ』


『誰に?』


『サドみたいな藤田くんの兄上に』


そこまで打つと皆が笑い声を返してきて__


『その話、今度ゆっくり聞かせて』


『サド!マジでヤバい!』


『会ってみたい!やっちゃんのお兄さん!』


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