お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
意外に紙で切ると痛いよねと同情してくれる。

ホントに…と言うと小さく微笑まれた。
私も笑みが溢れ、二人で少しだけ笑い合った。



「波南、ごめんね」


村田さんは笑ってた顔を締めて謝ってくる。


「折角発案してくれたのに、波南のアイデアですと自信を持って言えなくて」


ずっと気にしてたのか、村田さんは自分を力のないリーダーだと責めた。


「もういいですよ」


そう言うと村田さんは俯いてた顔を上げる。
その顔に向いて笑いかけ、あの商品が世に出回るんだから…と話した。


「あれが世の中の人に認められて、ヒット商品になるといいけど」


こだわりの強い人に向けて作ったものだ。
万人ウケする筈がない。


「ヒットなんてならなくてもアレは絶対に売れるよ。私が保証する!」


波南があれだけ頑張ったんだからと言ってくれる彼女を見て、芯から心強い言葉だなと思った。


「やっぱりさすがは村田さんですね」


この間は自分の方が悪かった。
心が狭くて本当にごめんなさい。


「何よ、いきなり」


「ううん、単純にそう思っただけなんで」


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