お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
そう言うと、納得いかない顔を見せる。
唇を窄める彼女に微笑みかけると何を思ったのか、急にあの事を聞いてきた。


「ねえ、あの朝皆が言ってたけど本当なの?外科の先生に送られてきたって」


二人で飲んだ翌日のことを聞かれ、急に冷や汗をかくような気がした。


「いや、あれは事実なんですけど、違うんです」


「は?違う?」


「送られたのはホントなんです。実は酔っ払い過ぎて先生の病院に泊めてもらう羽目になったんで。
でも、彼氏でもないし、そもそもあの人には彼女もいるみたいで…」


エリナと呼んでた人のことを思い出し、ツンと胸が痛む。
村田さんは驚いた顔して泊まった!?と声を上げ、そう…と同情するような顔つきになった。


「そうなんだ…ごめんね、私が先に帰ったから…」


ショゲて謝る。
村田さんの責任じゃないですよーと慰め、それからハッと思い出した。



「あっ!」

「何!?」


ビクッと仰け反った村田さんは丸い目をしてる。
そんな彼女を見つめ、そう言えばあの夜の飲み代を支払ってないと思い出した。


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