気付けば、君の腕の中。


ぼろぼろと涙が零れ落ちる。

…何て、あたしは無力なの?

どうして引き止める言葉すら見つからないの?


今にも玄関から出て行ってしまいそうなお父さん。

此処からでは見えないけど、リビングで一人ぼっちのお母さん。


「っお父さん!」


振り返ってお父さんを呼んだけれど、返事は返って来なかった。

代わりに聞こえるのは立ち去ろうとする車のエンジンの音。


慌てて追いかけようとする。

しかし、あたしの服の袖をぐっと掴まれた。



「……おか、あさん…」


泣き腫らした目でこちらを見るお母さん。


「ごめん、ね…? お母さん、何にもしてやれなくて…お父さんと引き離してごめんね」


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