気付けば、君の腕の中。


違うんだよ、お母さん…!

あたし、お母さんが悪いなんて思ってない。
何にも出来ない自分が悔しくて、情けなくて。


謝らなければならないのはあたしのほうだ。


小さい頃から勉強が苦手で、投げ出して。散々な思いでテストを終えると、家で待っていたのはお父さんとお母さんの怒声。


“どうして上の子も下の子も勉強や運動が出来ない!? お前の教育が悪いんじゃないのか!?”


“貴方だって会社ばっかり…! 少しくらいは娘のことを見てあげてもいいじゃない!”


“俺は家族の為に働いているんだ! それの何が悪い!!”


やれば出来ることから逃げていた。

やりたくないからと目を背けた。


だから変わろうとしたのに、結局何一つあたしは大人になんてなれていない。


「…お母さん」


あたし、きっと強くなるから。

だから…今は泣いてもいいかなあ。


頑張ったら“凄いね”って褒めてくれる?

お父さんを連れ戻して、お姉ちゃんとも和解出来たら、昔みたいに家族旅行に…行けるよね?


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