気付けば、君の腕の中。


偶然同じ美術部だったアイツが、先輩に絡まれているのを見た瞬間、体中の血が逆流しそうになった。


アイツの何を知って「平凡でそんなに何かが凄いわけでもねー」なんて言えるわけ。

坂木を見て泣きそうになっている顔も、ガキたちと遊んで幸せそうに笑う姿も、おれを睨む子供っぽい表情すら知らねーくせに。


…しかも、バカ女と付き合ってた、だ?


その目的が「メンドーな女に付き纏われなくて済んだ」から?

だからまた付き合う?



ふざけんなよ、これ以上このバカ女を泣かせるなよ。



そう思ったら体が動いていた。

おれが、コイツを守ってやりたいと思ってしまったのだ。


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