気付けば、君の腕の中。
あわあわとするあたしを引っ張って、五十嵐くんは駅とは反対方向に足を進めた。
…何を言っても聞いてくれないな、これは。
あたしが諦めたことに気づいたのか、手を離した五十嵐くんは欠伸をしながら、あたしの歩幅に合わせてくれた。
途中で和菓子のお店を見つけると、適当な理由を言って、菓子折りを買った。
い、いきなり誰かの家に上がるなんて…、手ぶらではとてもじゃないけど行きづらいよ…!
「そんなのいらねーのに」
「こ、こういうのはいるものだよ!」
「ふーん」
つまらなそうに呟いた五十嵐くんは、不意に足を止めた。
どうやら五十嵐くんの家に着いたようで、あたしは顔を上げた。