気付けば、君の腕の中。
視線を下ろすと、ひなちゃんがきらきらとした瞳で「はやく!」と口を動かせた。
…こ、この状況で言うの?
えっ…五十嵐くん怒らない?
逆上せてる状態で急に名前を呼ばれたら、パニックにならないかな…。
だけど、こんなにも純粋な瞳で見つめられたら無視なんて出来ないし…。
「あ、あの……」
ふと思ったけど、男の子を下の名前で呼ぶなんて、凜くん以外なかったなあ…。
…あれ、五十嵐くんの下の名前って?
不安になってひなちゃんへ視線を向けると、ぱくぱくと口を動かして教えてくれた。
「い、い、陰輔、くん……」