気付けば、君の腕の中。

奈々美の言葉に期待してしまいそうだった。


「ち、違うでしょ…。だって、あたしは応援しようと思ってるんだからさ」

「じゃあ一ノ瀬さんの気持ちは？」

「桃の……？」

「自分の好きな人と付き合えてるのに、その人は別の人を見てる…なんて、絢華なら分かるでしょ？　先輩のときと同じよ」



先輩と付き合っていた日々は、本当に辛くて苦しかった。


「いっそのこと振って欲しい、そう思わなかった？」



奈々美の言うとおり、早く振って欲しかった。でも、独りになるのが怖くて言えなかったのだ。


「…失恋することが大事なこともあるのよ。絢華、ずっと“友達”っていう言葉に縛られないで、気づくべきだわ」


あたしは凜くんと桃の背中を押せば、二人が幸せになれるんだと信じていた。

だけど―…、凜くんと桃はそれを望んでいなかったのだ。