気付けば、君の腕の中。


まるで逃げ続けていた感情が、頭の中で弾けたような気分だった。


「坂木は恋愛を知らなかったんでしょ?
だけど、いつの間にか…していたのよ。初めての感情だから戸惑って、絢華に相談してない?」



奈々美の言葉はすんなりとあたしの心に入り込んで、全ての答えを教えてくれた。


「“俺を見てくれないのが辛い”って言われたら、それは坂木が絢華に恋をしている証拠よ」



本当は期待したかった気持ちが、今になって溢れ出した。



「家族のことを全て終えたら、…坂木に告白するんでしょ?」


奈々美とカフェに行った日の会話が、頭の中で聞こえた気がした。


―「家族みんなの笑顔を取り戻して、もう一度歩き出せたら…、そうしたら――」


―「凜くんに告白をして、ちゃんと恋愛について向き合いたいんだ」


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