気付けば、君の腕の中。


お姉ちゃんは「ずるい!」って言っていたけれど、3年分早く産まれて、お父さんとお母さんを独り占めしたのだから、あたしだって欲張ってもいいだろう。


…なんて、幸せな今日、つまりはあたしの誕生日を過ごせるのだと思っていた。



玄関を出ると、思ったとおりポストにプレゼントが窮屈そうに顔を出している。

毎年大人になったときに必要だからと、料理本をくれた。


そして、今年も去年とは違う料理本だった。



もう、お父さんには作ってあげられない、寂しい本だけれど、それでも大切にするよ。


慎重に本を鞄に入れると、あたしは袖で涙を拭って、お母さんの大好きな白菜鍋の材料を買いに行くために、玄関の鍵を閉めた―。


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