気付けば、君の腕の中。
ふん、と鼻を鳴らして、俺に背を向けた五十嵐を引き止めた。
「…もう“友達”じゃなくていいから、たまには連絡、返してくれたら嬉しいんだけど…」
「……気が向いたらな」
そのまま絢華のところへ向かった五十嵐は、優しく頭を撫でていた。
…あれが五十嵐なりの愛情表現なんだろう。
俺も絢華のところへ向かおうとしたとき、さっきの男に呼び止められた。
「なあ、俺が言える立場じゃねえけど、一応アイツは俺の初恋の女だから、泣かせんなよ」
「言われなくても……、もう泣かせたりはしないよ」
それだけを言って、絢華に近づくと、俺のものだと主張するように、腕の中へ引っ張った―。