天空に一番近い蒼~女子校体育教師と生徒の恋の場合
まだ冷たい早春の風がびゅうっと空から吹き降りてくる。

先生のウィンブレの上下が擦れて音を立てる。

一人の時間を満喫するには耳障りな音。



「ていうかその服、シャカシャカ煩いよ。」

「ん?これ?まぁシャカパンって言うくらいだからな。」

「てか普通にダサい。なんでそんなん着るの?」

「えー!だってこれ着なきゃ寒いじゃん!」

「いちいち可愛い子ぶらなくていいから。」

「なんだよ冷たいなー、お前。」



早く吸い終わって帰ればいいのに─



そう思いながら空を見上げていると、

キーンコーンカーンコーン…

無情にもチャイムが鳴った。



「さぁってと!」



先生が煙草を消して立ち上がる。



「ほんじゃ午後も頑張っか!」



元来た扉の方へ向かいかけて

「およ?」

と私を振り返る。



「お前は?」

「行かないよ。」

「え?」

「行かない。

誰かさんに一人の時間を邪魔されたから、仕切り直し。」



今までどんなにこの時間が幸せでも授業はさぼったことはなかった。

けど今日は気分が乗らない。



先生に質問返しして上手いこと騙くらかして、屋上から追い出されなくて済んだけど、流石に何か言われるかな、と思ったけど…



「…ふぅん。

じゃまたな。」



それだけ言って先生はまたキィと軋む扉を開けて、北風に「寒ぃー!」とか言いながらその向こうに姿を消した。



屋上に一人残された私は…



「…テキトー。」



風の中に呟いて、もう一度空を仰ぎ見た。

      *  *  *
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