雨の降る世界で私が愛したのは


 似てるって外見のことを言ってるのだろうか、それとも性格が猫みたいだと言ってるのだろうか。

「アーモンドみたいな目とか小さく見えるけど開けるとでかい口とか、笑うと右側だけにできるえくぼとか、あ、えくぼは猫はできないか」

 褒められているのかけなされているのかどっちか分からずに反応に困る。

 毛繕いを終えた猫は依吹の足元にやってくると柔らかい動きで何度も自分の頭を依吹にこすりつける。

「すきぃ、すきぃ」

 と小さく喉を鳴らしている。

 一凛はなんだか複雑な気分になる。

「そう言えばこのまえ産まれたピグミーマーモセットがすごい可愛いんだぜ」

「なにそれ?」

 依吹は猫の頭をゆっくり何度か撫で、最後に猫の小さな額をくしゃくしゃっとした。

「すごい小さな猿なんだ。赤ちゃんなんか指ぐらいの大きさでさ」

 猫はもおっ、と言うとそれでもしばらく依吹の近くにいたが、やがて雨の中どこかへ行ってしまった。



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