雨の降る世界で私が愛したのは
産まれてきた子は
カーテンの向こう側でベッドが軋む音が聞こえた。
「よいしょっと」
一凛の声が聞こえる。
「もうそろそろ行くかい?」
颯太はピンクのカーテンの裏側に声をかける。
返事はなかった。
「一凛ちゃん、起きたんだろ?そろそろ行くかい?」
颯太はもう一度声をかける。
返事はなかった。
颯太は座っていた椅子から腰をあげ
「入るよ」
とカーテンをかき分けた。
お腹を押さえた一凛が体を曲げてうずくまっていた。
「一凛ちゃん!」
一凛は苦しそうに呻いた。
「颯太さん痛い、お腹痛い」
颯太は時計を見た。
ほのかはイヤホンマイクを外した。
しばらくしてまた装着すると、
「大声出さないでくんない」
と大声で言った。
『悪い』
と依吹の呟く声がイヤホンを通して聞こえる。
「ま、気持ちは分からなくもないけど」
『で連絡はついたのか?』