気付いて、届いて
「楽しかった?」

「うん!」

「俺も」

正直、ステージはほとんど見ていない。

彼女の横顔がすごく可愛くて。

「疲れてない?」

こくん。

ああ、少し、お疲れみたいだ。

「あっちのベンチに行こうか。木陰で涼しそうだし」
こくん。

彼女の手をそっと握る。

柔らかくて、ひんやり気持いい。

「手冷たいね?寒い?」

「冷え症だから…」

途中の自販機で、飲み物を買い、ベンチに座って、一息つく。静かな風が心地いい。

イベントが終わり、後片付けが始まった。



ふと、横に座る彼女を見た。

膝に缶を乗せ、足元を見つめてる。

いつもより緊張のない柔らかな表情。

いつもと同じように話続ける俺。相槌を打つ彼女。

そうしてるうちに、公園は静かになって行く。

彼女のふとももに手を触れた。

手と目を交互に見る丸い瞳。

頬に、額に、キスをした。
彼女は黙って受け入れた。
「車の中に行こうか」

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