この恋は、きみの嘘からはじまった。
目を合わせずに横をすり抜けようとすると、向いた方向に手が伸ばされてフェンスを掴む。
目の前に腕があって、進めなくなってしまった。
勢いがよくてがシャンと大きな音を立ててフェンスが揺れたから、びっくりして完全に尻込みしてしまう。
「もう琴乃を傷つけない。
あのころの僕とは違うんだよ」
「ごめんなさい」
「どうして?」
いきなりもう片方の手が私の顎を掴み、無理やり顔だけ向かせられる。
至近距離に小野寺くんの整った顔があり、顎を引くもそれを許してくれない。
「……離して」
「嫌だ。
琴乃と別れたあと、僕は本当に絶望した。
それを紛らわせようといろんな女と遊んだ」
知ってるよ。
大好きだったもん。