【完】麗人、月の姫



2人とも平安装束のような、現代では珍しい不思議な格好をしており、1人は整っていると思われる顔を扇子で隠し、もう1人は後ろに結んだ長い白髪をサラリとなびかせ、笑っている。


扇子の人はともかく、隣の白髪の人は優しそう…………………………じゃなくて!!!


この人たち何でそんなところに登っているの!?


「よっと……」


_______スタッ。


2人は上から下に緩やかに飛び降り、私とは真反対のソイツ側にいた。


「いけませんね。やっと見つけた姫にこんなことをするなんて………………………………許せませんね」


「おいおい、幸斗(ゆきと)。殺気が隠せてねぇよ」

「蓮(れん)だって怒っているではありませんか!表には出さずとも分かります」

「そりゃあ、俺らが必死に探し続けたやつだ。傷が入ってるとなると目つきは変わるさ」

森の隙間から、綺麗な月の光が射し込む。

その光がちょうどいい具合に2人を照らす。

その姿は美しく、言葉に表せない。


「消え………ろ!」

追い込まれたソイツは口の中から、どす黒い煙のようなものが巻かれた剣を取り出した。

「くっ……あれは陰人が使う剣だな。実物を見たのは初めてだ。あれに触れると重症だ、気をつけろ」


「分かってますよ……っ」

この場に緊張感が漂う。


「お前ら…………2人…………殺す…………」

「へぇ、やれるもんならやってみな?俺らは簡単には潰せねぇと思うがな」


蓮と呼ばれていた男は、扇子の持った手を水平に広げた。

「狂花」

そう呟くと、ソイツの周りに綺麗な花が咲いた。

見惚れてしまいそうなその花たち。

この場にこんな技だからか、気が抜けてしまいそうだ。


「なんだ!?」

相手もかなり戸惑っている様子。

「一見普通の花。しかし、ときには毒となる」

仰向けの扇子を縦にしたとき、その花は姿を変えた。

毒々しい色の花に。

「う…………っ………ぐっ……」

「今だ、幸斗」

「はいよ!」

人差し指と中指を☓になるように組むと、その指で星型の印を作る。

「さぁ、灰に戻りなさい」

眩しいほどの光………………あの時みたいだ。


朽ちるように灰のなって姿を消した。


「ふぅ………………取りあえず一見略着?」

「説明している暇はない。取りあえず、一緒に来てもらう」

2人は座り込む私にそう言った。

見た目的には悪い人にはみえない。

さっきも私を助けてくれたように見えたし。

でも、簡単に信用していいのだろうか…………。

もし、悪い人だったら?

「……………警戒心強いねぇ。そうゆうとこは麗華様譲り?」

「あの方が亡くなって……………随分経つな。コイツが未来を変えられそうなやつには見えんが」

「だって、まだ15歳でしょ?これからの発展が色々と楽しみなとこだよね(笑)」

うん。怪しい人…………………だね。


「微量の力を感知するのに結構手間取ってしまったな。しかも、先越されてるとは」

「それですよ。透真の連絡では学校で不可解な事件も起こったらしいですからね。結構前からこの地に降りていたと考えていいでしょう」

とうま…………………不可解な事件…………………。


なんか見覚えがあるような。


「あ、お母さん!!!!お母さんはどうなったの!?」

会いに行かないと…………………。


「麗子様か?感知できるか?」

「待ってください………………いえ、反応ないです」


「困ったな………………お前の家は?」

「あ、公達区の吹田通りで番地は…………」


「連れて行った方が速そうだな。仕方ねぇな………………」

「ひゃあ!!??」

「変な声出すなよ!!!誤解される!」


「あ、すいません……………」



「え〜、何なに?変なことしたのですか?(笑)」


「ほら出た………」




< 19 / 86 >

この作品をシェア

pagetop