【完】麗人、月の姫




 ✽


「それより、この城をどうにかしないとですね…………」

幸斗さんは周りを見渡すと、その現状に苦笑いをした。

「仕方ねぇよ。俺たちは所詮使者だ。そんな特別な力は持ち合わせていねぇ」





「なぁ、美麗」

「どうしたの?月路くん」

「……………その月路くんってのやめてくれない?あれは下で生きるための架空の苗字だし、ここでは透真って呼べ」


あれって、本当の苗字じゃなかったんだ……………。


「でも、いきなり言いかえるのってちょっと難しい…………」

慣れていないし……。

「言ってたら慣れる。それ以外は許さない」

…………………一応私主ですよね?

でも、確かに偽の苗字で呼び続けるのは、月路く…………いや透真くんに失礼だよね……………。

「透真くん」

「そう。言えば出来るじゃねぇか」

そう言うと透真くんは仏頂面からフッ……と、一瞬だけ笑った。………………気がした。


「お前の力でどうにかならねぇの?」

「私の力………?」

「前に古い書物で見たんだ。仮説だが、この城を良い状態に保たせているのは麗人ではないか………と。神の力がそうさせているのではないかって、書かれてあった」


……………つまり、麗人がこの城からいなくなったから、荒れ果てたのではないか、ということね。


「でも、正直私どうやって力を発動させたらいいのか分からなくて………」


やれるものなら、やりたいんだけど…………………。


「そうだな。まずは修行が必要だ」

「修行?」

神様にも修行とかあるんだ……。

「力を発揮するには、やはりそれなりの修行がいるものだ。神様もな、日々努力していることを忘れるな」

…………………知らなかった。

「修行すれば、私も力が操れるようになるのかな?」

「それはお前次第だ。それによっては使い物になると思う」

………………私の力が役に立つのなら。

「私、修行頑張ります!」

努力してみせる!!



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