ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
「…………ねぇ、おじさん。…おじさんは、なんで、私を拾ったの?」

「え?」

「養護施設に子供なんていっぱいいたじゃん。……なのに、なんで私にしたの?」

震える声で精一杯伝える。

それに帰ってきた返答は、意外なものだった。

「…俺、お前を養護施設から家に迎えた時は、嫁がいたんだ。
嫁は、子供が出来なくて、養護施設に行った時に、いつも、部屋の隅にいるお前を見つけて、自分が助けてあげたいって言ったんだ。
けど、お前を家に迎えたあと、お前はずっと泣き続けた。
"お兄ちゃん、お兄ちゃん"って。
最初は、戸惑ってたんだけど、だんだんと腹を立てたのか、ある日、嫁は小さなお前を殴ったんだ。
その後、俺と嫁は離婚した。
離婚したあと、俺は前まで共働きだったから、1人でお前と自分の分を稼ぐのにだいぶ苦労したんだ。
その頃、お前は保育園に行ってた。
俺が疲れ果てて、保育園にお前を迎えに行くと、お前は友達とキャッキャ言って遊んでて、俺が帰るよって言っても駄々をこね始めた。
最初こそ、我慢できてたんだが、離婚してから時間が経つにつれ、俺の酒の量も増えて、家に帰ってからお前に当たるようになったんだ。
嫁がお前を殴ったのを見た時はなんてことするんだって思ったのに、いざ自分が加害者になると、お前の痛みが分からなくなってしまった。
まあ、話が長くなってしまったが、結論を言うと、お前が独りぼっちで寂しそうに、養護施設の部屋の端でいつもいたからっていう所かな…
最初は、善意に溢れてるつもりだったのに、いつの間に、こんなことになったのかな……」
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