ペチュニアの恋文
(もう、それだけで感謝しなくちゃ…だよね)

二人の存在は、それだけ自分にとって大きなものだった。

でも、あれから数年。

皆成長して、今は昔とは違った生活がそれぞれにある。

(もう、良いんじゃないかな…)

それ以上を望んだら罰が当たるかも知れない。


そんなことを考えていた時だった。


公園の入口の方から、こちらへ向かって歩いて来る人物がいることに気が付いた。

(え…?)

小さな子ども達が多い中、背の高いその人物は自分と同様に制服姿であることもあり、どこか公園内でも目立っている。

(あれは…)

遥は驚き、思わず立ち上がると、その人物がゆっくりと目の前までやって来るのを呆然と見つめていた。

まるでスローモーションを見ているかのように長く感じる。



「あお…くん?」


(何で、蒼くんがここに…?)

遥は信じられないものを見るように目の前に立っている蒼を見上げた。


何故、ユウくんとの約束の場所に蒼くんが現れるのだろう?

(偶然…ってことは、ないよね?)

公園内なのだし、通りすがりということもない。

そもそも蒼くん自らが敢えて自分の前に現れることなんて二度とないと思っていた。

避けられているのだから、当然だ。


だが蒼は、どこか思いつめたような表情を浮かべながら遥の前に立っている。

「あの、何で…?」

訳が分からず口を開きかけた遥の言葉を遮るように蒼が言葉を発した。


「遥…。ユウは、来ない」

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