ペチュニアの恋文
「えっ…?」


(今…何て…?)

遥は我が耳を疑った。

(ユウくんは…来ない…?何で蒼くんがユウくんとの今日の約束のことを知ってるんだろう?)


この場に蒼が現れた時点で半ば混乱気味だった遥は、その言葉に尚更戸惑いを見せる。


「だから、帰れ。今日の約束のことは忘れるんだ」

「……っ…」


言葉が出て来なかった。

驚きに目を見開きながらも、蒼の表情からその言葉の意図を探るように見つめる。


(何で…?何で蒼くんが、そんなこと言うの…?)


もしかして、ユウくんに頼まれたのだろうか。

来ることが出来ないから蒼くんに伝達を頼んだということ?

でも、約束を忘れろっていうのは…どういう意味なんだろう。

もしかして、約束自体なかったことにしたいのかな?

…そういう意味?


固まって言葉が出ないでいる遥に。

蒼は一瞬だけ申し訳なさそうな、どこか辛そうな表情を見せる。

だが、直ぐに伝えたいことは全て伝えたとでもいうように向きを変えると。

「…じゃあ、そういうことだから…」

そう言って遥に背を向けて歩き出した。

その背を遥はただ、呆然と見送ることしか出来なかった。



久し振りに蒼くんと面と向かって顔を合わせた。

本当は、それだけで凄く嬉しい出来事の筈なのに。

(何で…こんなにも、悲しいんだろう?)

自分でも何でこんなことになってるのか、もう解らなかった。


こんな時だけ声を掛けてくるなんて、狡いよ。

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