【短】イノセント


本当のことを言ってしまえば。

…犬井の存在は、大分前から気になっていて。


…気になってる、なんてレベルじゃ治まりがつかないほど、惹かれるっていうのが更に本当のことで。


なのに、なんですぐに「あたしも好きだよ」と返せなかったのか…。


そう思うと胸が軋んで、苦しくて仕方が無かった。


…だって。


あたしが彼を見つめていた時間は、きっと。

……きっと、彼があたしの存在を知ったよりももっと早くて。


こんなに焦がれるほど好きな気持ちを、今更さらっと言い流すなんて出来ない。


「あたしもだよ~」なんて…ぬけぬけと伝えられてしまえるほど簡単なモノじゃないから。


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