トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「そろそろ、お茶でもして帰るか。

通り沿いに和風のカフェがあるけど、そこでいい?」


「行きたいです。さっき通るとき見えて、可愛いお店だなーと思ってたんです」


少し歩いた先には古民家をリノベーションしたカフェがあり、茶室のような小部屋に通された。ほっこりとして落ち着いた雰囲気なので、盗聴器があるのを忘れてつい気が緩む。


篤さんはアクアリウムの金魚を見た記念にと、透き通った金魚が浮かぶ水菓子を二人分注文した。


しばらくして抹茶と一緒に運ばれてきたその和菓子は、つるんとした質感と模様が涼しげで可愛い。


「綺麗ですね。食べるのが勿体ないくらい。」


「夏っぽい食い物だな。夏っていっつも気がついたら終わってるんだよなぁ……。」


篤さんは足をくずして座り、座卓に置いてある団扇でぱたぱたと仰ぐ。


座卓に置いてある携帯が鳴り、篤さんが画面を見た。そして口の前で人指し指を立てる仕草をして、その画面を私に見せてくれた。
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