トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
その時ドアが開く音がして、


「遅くなって悪い。瑞希?」


と、兄の声が聞こえた。


兄はソファに押し倒された私と、重なる篤さんの姿を見て手に持っていた荷物を落とし、


「おい……!」



そう言うが早く、見たことも無いような険しい目付きで篤さんに飛びかかった。



「お前、何をやってる………!妹に、瑞希に何をした!」



そのまま篤さんの衿をつかみ、振り上げた拳を顔に当てようとして、その寸前で踏みとどまるように手を止めた。



この状況でも篤さんは顔色ひとつ変えず、むしろ満足そうに笑って兄を見据える。


「正解。よく我慢できました。お互い顔は商売道具だもんね?」
< 13 / 235 >

この作品をシェア

pagetop