トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「それでもまだ、あいつはどこか空虚なんだよな。だからそれを覆すのが君だと思ったんだ。

拓真が君をちゃんと手に入れたら、あいつは自分を縛る檻を壊せるんじゃないかって」


「私は、兄にとってそんなに大きな存在じゃないですよ……。

篤さんの言っていること、分からないです。」


「本当にそう思うの?

俺は、拓真が君を大事にしてるのはずっと知ってたし、君が拓真に恋をしてるのも一目瞭然だった。

あとはきっかけさえあれば、と思って」


ここから先は居心地の悪さを感じながら続ける。


「あの時はごめん。拓真の嫉妬を煽るために、君に酷いことしたんだ。」


「そんな……兄が篤さんに嫉妬なんて。


保護者っぽく私を怒ることはあっても。この前だって妹としか見れないって……。」


「そこは俺からは何とも言えないけど。拓真と君の話だからね。

何より、今となってはそんなこと俺は望んでないんだ。


君を好きになってしまったから。


今はこう思ってる。拓真は、君を完全に手にいれるか、失うか、そのどちらかが無いと先に進めないって。


あいつが、君の全部を手にする覚悟が無いなら、俺が拓真から君を奪う。」


苦悩する彼女の瞼に口付けをした。

今こんなことをしても、彼女の心は拓真のことでいっぱいだろうけど。
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