トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
濁った視線で瑞希を見る。


やめてくれ。やめて……ください。
喉が張りついて、その声すら出せない。


「タクちゃんに妹なんかいないし、要らないわ。


そういうメッセージを送ったんだけど、気がついてくれた?」


あの狂気じみた写真は、この人のものだったか。


背後にいる瑞希に寄りかかり、体重を預ける。動けない体でできるのは瑞希が決して前に出てこないようにすることくらいだ。


「その子は妹では……ありません。赤の他人ですから、どうか……」


「口答えするのは相変わらずね。お仕置きが必要かしら。」


その人はちょっとした悪戯のように俺のネクタイを引っ張って、嬉しそうに首を閉めた。


「……っ」


少しくらい我慢できる気がする。どうかこのまま、瑞希を見ないで。


その人の細い腕に対して、昔のように無抵抗に暴力をやり過ごそうとしている自分がいた。今となっては力で押し負けるはずは無いのに、決定的に抗えないのだ。


首を閉める力が少し弱くなる。
そう、この人はこんな風に我慢の限界を心得ている。簡単に玩具を壊すようなことはしない。


「どうか、相手を間違えないでください。

あなたの奴隷は、僕ひとりで十分でしょう?」
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