トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「あの人……大人になるまで兄のことなんて放っておいたくせに。今になって執着するなんて、勝手すぎます。

父親に似てるって嬉しそうにして……」


「結局、昔の男の代わりに執着してるだけで、子供への愛情では無いわけか。

嫌な話だな。」


篤さんが顔を覆うと、手首に包帯が見えた。


「手首どうしたんです? 大丈夫ですか?」


「あぁ、これ? 拓真を抑えようとして失敗したんだ。あいつ馬鹿力だから。」


「すみません。兄が……」


「いいって。拓真が起きたら文句言ってやろうと思って、大げさにしてみただけだよ。」


その時、集中治療室のランプが消えて、医師の先生が部屋から出てきた。


「黒須拓真さんのご家族の方ですね。

容態は落ち着いています。しばらくすれば意識も回復するでしょう。個室に移りますので、ご面会はそちらで。」


「良かった…………。ありがとうございます。」


篤さんも、長いため息をついてやっと緊張が解けたようだった。


「それじゃ、俺はこれで。」


「兄に会っていかないんですか?」


「今の拓真には君がいれば十分だよ。また明日来る。

瑞希ちゃんも、後でちゃんと休んどけよ。」
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