トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「色々と言いたいことはあるけど」


兄がわざとらしく眉間に皺を寄せてに呟く。でもすぐに柔らかな笑顔で



「可愛いな、瑞希」



「…………!」



暖かな手が、フワッと腰に回された。



どうしよう。すごくドキドキする。



「ははっ。耳が赤くなった。」



そう言って私の髪をなでる。



「もうっ、今そんなこと言わないで。」



「何で。いつも可愛いと思ってるのに」



周りに聞こえないように、兄が耳元で囁く。



もうだめだ。カメラなんて意識できない。



幸せで溶けてしまいそうな感覚に身を任せていると、



シャッター音が響く。



私、今どんな顔してるんだろう。


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