トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「まず今日の撮影の言い訳させて。


最初に何も説明してあげられなくて悪かった。」



「何も説明してあげられなくて……?」



「撮影するのは初めてでしょ。


瑞希ちゃんには説明すればするほど、動きが堅くなるんじゃないかって、ディレクターも心配してて。


で、大まかなガイドだけして、自然なリアクションを撮ろうっていうプランになってさ。


びっくりさせてごめん。


ただ、仕上がりは良かったよ。みんな誉めてた。」



そうだったんだ。



だとすれば、私の未熟さをすべて篤さんにカバーして貰ってたんだ。何も知らずに負担をかけていたことを、申し訳なく思う。



「仕上がりが良いのは、全部篤さんの演技のお陰です。



もう普段と全然違う人みたいで、俳優さんって凄いなって、実感しました。」



「演技ね……



そう見えた?



今日に限って言えば、俺は演技なんかしてないよ。」
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