トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「酷い顔って、ひっどいんだけど!!


お兄ちゃん、どうして朝から傷口に塩をごしごし塗り込むようなこと言うの?」


烈火のように怒った瑞希が腫れ上がった瞼で睨むので、思わず後退りした。


「違っ……、ごめんって。


……瑞希?


瑞希さーん?」


平謝りしながら、兄としての威厳が跡形もなく消し飛んでいくのを感じた。


「お兄ちゃんみたいな外見にコンプレックス無い人には分からないと思うけど、そういうのすごく傷付くんだからね。」


「いや、顔の造形の話じゃなくて。


だいたい俺だって目付き悪いとか色々気にしてるんだが、


……そんな話じゃなくて、瑞希の目が腫れてるから。」


「お兄ちゃんのせいでしょ」


「……面目無い。」


「泣いた後は目を冷やさないとこうなるんだから。


昨日のうちに冷やしておきたかったのに、お兄ちゃんが離してくれないから。


昨日、どれだけ酷いことしてるか分かってる?って言ったたでしょ?」


「え。あれはそういう意味だったのか……?」


あの時は確かもっと情緒的な意味で言っていたはずだが、憮然とした瑞希に逆らえるわけもない。せめてこれを、と目を冷やすための保冷剤とタオルを差し出しておく。
< 93 / 235 >

この作品をシェア

pagetop