トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
察しの良すぎる篤にばつの悪さを感じつつも、張りつめていた気持ちが緩んだ。


「家にいる?それなら後でふたりまとめて迎えに行くよ。


その代わりと言ったらアレだけど。」


「どうした?


何でも言ってくれ。」


「二時間後にもう一度起こしてくれないかなー。


瑞希ちゃんのモーニングコールで。」



「分かった。俺がかける。」


「二度も男の声で起こされるなんて」という篤の不平を聞き流して電話を切ると、二階から瑞希が降りてくる足音が聞こえてきた。


ざわつく心を抑えて、いつも通りにと自分に言い聞かせる。昨日を引きずらない方がお互いのためだろう。


「お兄ちゃん、どうしたの?朝から元気だね……」


眠そうな瑞希の声。篤に怒鳴ったのが聞こえてたか。


「ああ、悪い。」


振り返って「おはよう」と言おうとして瑞希の顔を見た途端、いつも通りにと意識した気持ちをつい忘れてしまった。



「うわ、酷い顔だな」



……どうやら言い逃れ出来ないほど、無神経に瑞希の地雷を踏みつけたようだ。


と気がついた時には既に遅かった。
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