絶対、好きになれない。
電車で
助けてもらったときからもそうだけど、
叶くんは他の人と雰囲気が違う。
話し方も、触れ方も、
「下心」というものがないのか、
「雑念」というものがないのか、

変わった空気感を持った人なのだ。

『叶くん、ありがとう。送ってくれて。』

結局、家の前まで送ってくれた。
のんびり他愛もない話もしたけど
元々わたしも叶くんも
口数の多い方ではない。
静かで、居心地のいい時間だった。

「うん、俺は楽しかった。」

ふわりとたまにしか見せない笑顔は
なんとなく特別な気がして嬉しかった。

『叶くん、笑った顔、いいよね。』

「そういうこと言ったら、勘違いする。」

もう辺りは暗くなっていて
ほんのり街灯がわたしたちを照らしている。

『ごめんーーー』

「いや、謝らなくていい。」

なんとなく、ふたりで伏し目がちになる。

< 94 / 136 >

この作品をシェア

pagetop