オオカミ社長は恋で乱れる
そして私の足を元の位置に戻してワンピースの裾も直してくれた。

「傷のことは気になるからまた寄らせてくれ。いいか?」

確認するように聞いてくるけど、「嫌です」とは言わせない雰囲気を持っている。

「はい」

端的に答えると、『うん』と頷いた西条さん。

「じゃあまた連絡する。君も何かあったら電話をくれ」

そう言うと立ち上がり玄関を開けて外に出た。

見送ろうとしたところで自転車の事を思い出し、まだお礼を伝えていないと焦りを感じた。

「あの!すいません、西条さん」

「何だ?」

振り返った彼の頭はもう高い位置にある。

見下ろしてくる視線は変わらず優しい。

「自転車ありがとうございました。とてもすごい自転車でビックリしました」

「ああ、佐賀から連絡があって君が気に入ってくれたと聞いて安心した」

「本当にいろいろとありがとうございました」

深くお辞儀をしてから頭を上げると、西条さんの右手が私の左頬を包んだ。

「もう遅いから早く部屋に入って休め。見送ってもらって悪いな」

「いいえ。西条さんも気をつけてお帰り下さい」

「ああ」

そう言って西条さんは帰って行った。

何だか不思議な気持ちになる。

そして左頬に残る感触が私を戸惑わせた。

誰かが私に触れるのは久しぶりで、その手の大きさ硬さについ異性を意識してしまった。
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