オオカミ社長は恋で乱れる
「えっ!」

急な行動に私は驚き声を上げたけど、社長さんは気にした様子もなくジッと傷口を見ている。

そして人差し指でそっと触れた。

「傷を負わせてしまったな・・・すまない」

切なげな眼差しを膝から私の顔へと移動させ謝ってきた。

その瞳には申し訳ないという気持ちが込められているのを感じる。

「全然大丈夫です。これくらい子供達と遊んでいればいつもの事なんです。怪我とかなんて付き物ですから。こんなに心配して頂くなんて返って申し訳ないです。私の方こそ車を傷付けてしまったし・・」

「あんなものはすぐ直せる。気にする必要もない。それより人の傷の方が重要だろう?」

その言葉が胸を熱くした。

きっとその声もだ。

低く響くその声で、立派な車よりも私の傷を気にしてくれる。

この人、本当に優しいなぁ。

そう感じてそのまま言葉に出してみた。

「社長さんって優しい方なんですね」

その言葉を聞いた途端に社長さんは、眉間にシワを寄せて不快な顔をした。

え?なんでそんな顔するの?

「あの・・何か不快にさせちゃいましたか?」

恐る恐る聞いて見ると、社長さんは真っ直ぐに強い視線を向けてきた。

「俺は社長さんじゃない。社長さんって何だか年寄りみたいだ」

「へ?そうですか?」

急に何を?と何だか可笑しくなってしまって吹き出した。

するとまた眉間にシワを寄せて見せる。

「そうだ。俺は社長さんじゃない。西条だ。西条優貴だ。名刺を渡しただろう?」

「あ・・はい」

「だから社長さんはやめてくれ。苗字でも名前でもどっちでも呼んでくれていい」

いやいや名前で呼べないでしょう。

そう思い苦笑いしたけど、「はい、西条さん」と言い直すと西条さんの眉間のシワはなくなり少し微笑んで見せてくれた。
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