オオカミ社長は恋で乱れる
「社長、どうされるおつもりですか?」

「何がだ」

「清水さんがシングルマザーだと知り、社長がこれからどうされるのかということです」

そう聞くと西条は鋭い目つきを向けてきたが、佐賀が気を乱すことはない。

これこそ西条が通常見せる顔だからだ。

彼のことを知らない者がこの目を向けられれば一瞬にして怯むけれど、秘書として常日頃そばにいる佐賀には何ら普通のことである。

「俺のしたいようにする。放っておけ」

「しかし・・・」

「話は以上だ、仕事に戻れ」

そう断言されて佐賀は仕方なく隣室の自席へと戻って行った。

そしてそこでも考えてしまう。

彼は本気なのだろうか?

初対面の女性に連絡を取り、本人自ら自宅まで訪ねただなんて。

彼の秘書として就いてから動揺する出来事が起きたのは初めてだった。

成人男性として女性に惹かれることは健全なことであることは、3歳年上である自分にも十分に理解できる。

彼はあの清水絵莉という女性によほど心惹かれたのだろう。一目ぼれという形で。

それは昨日の事故の時の彼女への態度ですぐに分かったが、まさかその後すぐ行動を起こすとは思ってもいなかった。

恋をするのは悪いことではない。

しかし・・・独身とはいえシングルマザー。

そこにどうしても引っ掛かりを感じてしまう。

西条優貴に相応しいかと問われると、彼の秘書としては簡単に頷けるものではなかった。

彼の気持ちは一時的な熱を帯びたものなのだろうか。

反対するわけではないが、自分にとっての案件が1つ増えたような気持ちになった。








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