オオカミ社長は恋で乱れる
「分かりました。いろいろとご迷惑をかけてすいません。よろしくお願いします」

そう伝えて頭を下げてお礼を伝え、腰だけ下ろしてまだ外に向けていた両足もちゃんと車内に乗せて座り直した。

そして佐賀さんはドアを閉めてくれると、反対側のドアに回り社長を乗せ、私の自転車から荷物を持ち自分も助手席に座った。

そして私の勤務先の大まかな所在地を確認すると、運転手さんに指示をして車を発車させた。

その車中で私の名前、住所、電話番号を佐賀さんに渡された手帳に書き込むと、交換に名刺を渡してくれた。

「清水さん、今後のご連絡は私がさせて頂きます」

そう言われて私は「はい」と答えるだけで・・・。

この高級車、社長さん・・。そんなことが私の頭の中をぐるぐる回る。

どうしよう・・弁償できるのかな？

自転車でぶつかってしまったのだから、もちろん傷ついているよね。

私、とんでもないことをしてしまった・・・。

この先のことを考えて思わずため息をついてしまった。

するとすかさず隣から低い声が降りてきた。

「どうした？大丈夫か？」

その問いにため息を聞かれてしまった気まずさを感じてすぐ否定する。

「いいえ！すいません・・何でもありません」

強張る顔でなんとか答えると、「そうか？」と探るようにしばらくじっと見られ続けた。
< 6 / 109 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop