オオカミ社長は恋で乱れる
そして走り出した車内では暫し沈黙の後、社長秘書である佐賀が口を開いた。
「社長」
「・・何だ」
窓の外の景色に目をやる社長が返事をする。
佐賀はその声の方にやや身体を傾け振り返り、自分の上司の顔をジッと見た。
「だから何だ」
秘書の探るような視線に不快を感じて眉間にシワが寄る。
しかし佐賀はそんなことに構わず気になっていることを質問した。
「先程の行為はどのように捉えたらよろしいのでしょうか」
「・・・」
答えない社長に更に尋ねる。
「ご自分から連絡先を教えるとは・・」
「うるさい」
遮ぎるように低い声で言葉を被せた。
視線をそらし、腕を組む。
そんな社長を見て軽くため息をついた佐賀は、確認するように事実を伝えた。
「失礼ながら・・彼女はお子さんがいらっしゃるようですよ?」
その言葉に一瞬固まった表情を見せた社長が、組んでいた腕を解き前のめりになって驚きの表情を見せた。
それだけでも充分目の前の秘書を驚かせた。
通常動揺など見せない目の前の男が、こんな些細なことで今まで見せたことのない顔を見せたのだから。
大手科学メーカーの御曹司として入社し、若いながらも成功の実績を収めて一昨年先代の社長から引き継いだ。
容姿の美しさからイケメン社長としてテレビ関係の出演依頼も多く、世間の人からの興味も高い。
しかしながらほとんど笑顔を見せることもなく、ハッキリした物言いや時に見せる冷徹さから持たれるイメージは時に周りを怯えさせたりする為、業界では『オオカミ社長』と揶揄されることもしばしばある。
そんなあだ名に似た名前で呼ばれいることが耳に入っても本人は全く気にする様子はなく、常に我が道を突き進むのみなのだ。
確かにピッタリあてはまるあだ名の『オオカミ社長』
ビジネスに徹してプライベートにあてる時間などはほとんど作らない。
広く彼の顔が知られている為、ビジネスと偽って擦り寄ってくる女性は山のように現れる。
それなのにそれらを異性として瞳に写すことは全く見られない為、多くの人達が玉砕していく場面を何度見てきただろう。
そんな彼が確認をしてきた。まるで静かに詰め寄るように。
「それは本当か?お前が彼女のことを何故分かる。初対面だろ?」
「ええ、もちろん初対面です。しかしながら乗っていた自転車を見れば分かります」
「自転車?」
「はい。彼女の自転車には前と後ろに子供を乗せるイスが付いていましたから」
「・・・本当か?」
「はい。嘘をつくことではありませんから」
そうハッキリと伝えると、社長は睨むように秘書を見てからため息をつき、背もたれに深く身体を落とした。
「社長」
「・・何だ」
窓の外の景色に目をやる社長が返事をする。
佐賀はその声の方にやや身体を傾け振り返り、自分の上司の顔をジッと見た。
「だから何だ」
秘書の探るような視線に不快を感じて眉間にシワが寄る。
しかし佐賀はそんなことに構わず気になっていることを質問した。
「先程の行為はどのように捉えたらよろしいのでしょうか」
「・・・」
答えない社長に更に尋ねる。
「ご自分から連絡先を教えるとは・・」
「うるさい」
遮ぎるように低い声で言葉を被せた。
視線をそらし、腕を組む。
そんな社長を見て軽くため息をついた佐賀は、確認するように事実を伝えた。
「失礼ながら・・彼女はお子さんがいらっしゃるようですよ?」
その言葉に一瞬固まった表情を見せた社長が、組んでいた腕を解き前のめりになって驚きの表情を見せた。
それだけでも充分目の前の秘書を驚かせた。
通常動揺など見せない目の前の男が、こんな些細なことで今まで見せたことのない顔を見せたのだから。
大手科学メーカーの御曹司として入社し、若いながらも成功の実績を収めて一昨年先代の社長から引き継いだ。
容姿の美しさからイケメン社長としてテレビ関係の出演依頼も多く、世間の人からの興味も高い。
しかしながらほとんど笑顔を見せることもなく、ハッキリした物言いや時に見せる冷徹さから持たれるイメージは時に周りを怯えさせたりする為、業界では『オオカミ社長』と揶揄されることもしばしばある。
そんなあだ名に似た名前で呼ばれいることが耳に入っても本人は全く気にする様子はなく、常に我が道を突き進むのみなのだ。
確かにピッタリあてはまるあだ名の『オオカミ社長』
ビジネスに徹してプライベートにあてる時間などはほとんど作らない。
広く彼の顔が知られている為、ビジネスと偽って擦り寄ってくる女性は山のように現れる。
それなのにそれらを異性として瞳に写すことは全く見られない為、多くの人達が玉砕していく場面を何度見てきただろう。
そんな彼が確認をしてきた。まるで静かに詰め寄るように。
「それは本当か?お前が彼女のことを何故分かる。初対面だろ?」
「ええ、もちろん初対面です。しかしながら乗っていた自転車を見れば分かります」
「自転車?」
「はい。彼女の自転車には前と後ろに子供を乗せるイスが付いていましたから」
「・・・本当か?」
「はい。嘘をつくことではありませんから」
そうハッキリと伝えると、社長は睨むように秘書を見てからため息をつき、背もたれに深く身体を落とした。