極上社長と結婚恋愛
 

「悩ませてごめんね。でも、勇気を出して好きだって言ってくれてありがとう」

その感謝の言葉に、私は慌てて首を横に振る。

ありがとうと言いたいのは私のほうだ。
こんな平凡な私を好きになって、鈍感で臆病な私のペースに合わせてくれる優しい直哉さんのことが、好きで好きでたまらない。

そんな気持ちをこめて、直哉さんの首に回した両腕に力をこめると、直哉さんは私のことを抱き上げたまま、ゆっくりと顔を近づける。

もしかして、キスされるのかな……。

絡んだ甘い視線に緊張して思わずうつむくと、直哉さんが小さく笑った。
そしてうつむいた私のおでこに優しくキスをしてくれた。

額にそっとふれた温かさに、愛おしさで胸がぎゅっと締め付けられる。

その瞬間、カメラのシャッターを切る音が響いて、私はびくっと飛び上がった。

我に返ればそこは撮影スタジオで、フォトグラファーの桜木さんはじめ、たくさんのスタッフさんの視線があることにようやく気付いて一気に体温が上がってしまう。


 

< 169 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop