極上社長と結婚恋愛
 

電話を切ってから、ふむ、と腕組みをしてレジカウンターに置かれたガーデニアの鉢植えに向かい合う。

つややかな濃い緑色の葉をもつ鉢。今は花もつぼみもついていないけれど、初夏になると可憐な純白の花を咲かせる。

ガーデニアを店名にしたのは、この花が私が花屋に憧れるきっかけだったから。
幼いころ出席した結婚式で見た、花嫁のブーケ。それに使われていた白い花が八重咲のクチナシ、ガーデニアだったのだ。

あまり出ない花だから、店の商品というよりも半分自分で楽しむために育てていたもので、売れるとは思ってなかった。

とはいえお客様にほしいと言われて断る理由もないので、霧吹きで軽く水をあげ鉢を綺麗に拭いていく。
宅配先の住所を見れば、お店のすぐそばのようだ。

一応配達用の三輪バイクもあるけど、ビジネス街の真ん中じゃ止める場所にも気を使いそうだしここなら歩きでもいいかな。
そう思い、鉢植えを抱える。

鍵を閉め、ドアに『配達中 すぐに戻ります』というプレートをかけると、まだ少し冷たい春風に肩をすぼめながら歩き出した。



 
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