ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
ふっと腕の力が緩んで上を向くと、絶妙なタイミングで唇を塞がれる。

角度を変えて、喰むように何度も何度も。

目を瞑るのが勿体ないのに、目を瞑らないと集中できない。

充満するような目眩の中に、甘い蜜。

彗大のキスは、色を魅る時のそれに少しだけ似ている。

もう少し。もう少しだけ。

おねだりを、しているのか、されているのか。
朦朧とする意思を酌むように、どちらからともなく身を寄せあった。



「……髪、せっかくキレイだったのに」

キスに夢中で、気付いたのはさっきだけど。
彗大の手に混ぜっ返された髪は、すっかり寝起きのようにクリンクリンと多方面に遊び回っていた。


「これはこれでエロいんだけど」

「彗大のエロがイマイチわかんない」

もういいや、と持っていた髪留めでゆるりと纏め上げると、またも彗大に髪留めを奪われ、髪をくしゃくしゃと混ぜられる。

「!え?ちょ、何?!」

「うなじがエロい。却下」


は、はぁ〜?!

なんなの今日の彗大、めちゃくちゃなんだけど!
めちゃくちゃなんだけど……。
そこが可愛いってどういう現象……っ!

ナニコレ。キタコレ。恥ずかしいけど、嬉しいって困る!

ああ、これね?これが世に言う


「……リア充爆破事件」

「勝手に事件化すんな」

お前、本性やっぱアホだよな。と首筋をつ、と吸われる。

「っ、あ……!」

「……爆発するわ」

押し倒されて、太腿を撫で上げられる。

「彗、」

「前から思ってたんだけど」

「……?」

「お前のニットワンピ、エロ過ぎ。公共の場ではヤメテ」

「!」ヒット1。

「オフショルダーもアップスタイルもムリ。俺の跡付けても無駄にエロくなるだけだし。余計危ないし」

「!」ヒット2,3。

「顔赤くなるのもダメ。可愛い過ぎて誘拐される」

「!」ヒット4。

「はぁーなんだこれ」

もうナニ!これ以上はやめてーー!


「お前彼女にしたら、俺めっちゃ口うるさくなるんだけど。俺がうぜー。」

ヒット!!の無限ループ。

このひと、めちゃくちゃ愛しくなるんですけど。

なんでこんな可愛いの?事件じゃなかったらなんなのよ。
< 132 / 144 >

この作品をシェア

pagetop