脳内☆彼氏
友達がいなくなって、私は焦った。教室で一人きりでお弁当を食べてたら、絶対目立つ。いじめれる。
暗い私が小学校の時いじめれられなかったのは、明るくて可愛いめぐが友達でいてくれたからだ。孤立してたら、クラスの人達に目を付けられる。
焦った私は、クラス中をコッソリ観察した。
いた。
一人静かに文庫を読んでる女の子。私と同じで人付き合いが苦手な子かも。読書の邪魔されて嫌な顔するかもしれないけど、ひとりぼっちでいるより、二人で寄り添ってた方がいじめの標的になりにくいし、あの子にもメリットあるはずだから…

私は昼休みになると、お弁当と文庫本を抱えて、女の子の席に近付いた。
「あ、あの。ここで一緒にお弁当食べさせてもらってもいい?」
女の子は怪訝な顔で私を見た。心臓がバクバクする。
私は、わざと自分の文庫本が見えるようにお弁当箱を抱え直した。
(隣りでお弁当食べて、本読んでるだけだから。友達になって、とか無理言わないから。)
私は「お願い!」と、手を合わせた。

「別に…いいけど。」
「ありがとう!」
私は急いで自分の椅子を運んできた。

その時だ。もう一人の女子が近付いてきたのは。
「私も一緒に食べていい~?」
返事も聞かずに、隣りの空いた椅子を引き寄せて座った。
「くみちゃんて呼んでもいい?」
「…うん。」
「あんた名前なんだっけ。」
いきなり振られて、私は驚いた。
「あ…観月花音。」
「じゃあ、かのちゃんね。わたしは、せっちゃんでいいよ!」

せっちゃんはテキパキと話を進めて行く。
その日は、お弁当食べている間も、その後も、せっちゃんのおしゃべりを聞いているだけで終わった。

(二人より三人の方が、いじめられにくいはずだし、会話が続かなくて気まずいなんて心配もないし、良かったかも。)

その時はそんな風に気楽に考えていた。

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