【完】姐さん!!
「ねえ衣沙……!」
バンッ!と。
勢い良く開けた扉。ベッドの上に寝転んで目を閉じていた衣沙は、「なるちゃんうるさい〜」といつもの調子で話しかけてくるけれど。
「結婚ってなに……!!」
「え? 夫婦になることだろ〜?
あと、婚姻は結婚の類似観念なんだってよ〜。ちなみにウィキ参照な」
「ごめん殺していい?」
結婚の意味ぐらい知ってるから……!
わたしが知りたいのはそんなことじゃないから……!あと参照とか本当にどうでもいい。
カツカツ歩み寄って、衣沙の腕を引っ張る。
「痛いって」と言いながら大して痛そうな顔をしていない衣沙は、マイペースに身体を起こした。
「聞いてないんだけど」
「何が〜?」
「っだから、結婚……!!
衣那くんと満月ちゃんが結婚するって話!!」
肩をつかんで、がくがく揺さぶる。
迷惑極まりないわたしの行為にも表情を崩さなかった衣沙は、「だから俺言ったじゃん」と平然と答えた。
「いや、"言ったじゃん"って、聞いてないし!」
「ああ、違う。そうじゃなくて。
"大事な話がある"って、昨日言ったじゃん」
……昨日?