【完】姐さん!!
腕を引かれて、強制的に足を止められる。
そっけなくしてやろうと思ったのに衣沙が真剣な顔でわたしを見るから、なにも言えなくなった。
「相手、誰?」
「衣沙には、関係ないでしょ……」
思わせぶりなことをされたら、困る。
衣沙が満月ちゃんを好きだってこと、知ってるのに。……わたしのこと好きなんじゃないかって、そんな錯覚、陥るだけで滑稽に思えてくる。
「あるじゃん、なるみは俺の、」
「嘘だから」
「、」
惨めだ。
満月ちゃんを中心に回る衣沙の世界で、好きになってもらいたいなんて、無理な話なのに。
「嘘だし、衣沙の知ってる通り、恋愛初心者だから。
遊ぶって言ったのも冗談だし、もういいでしょ?」
「………」
「手、離して」
そう促しても、なぜか彼はわたしの腕を捕まえたまま。
離してくれないから顔を上げて衣沙を見ると、彼の瞳がゆらゆらと不安定に揺れていた。
……なんで、衣沙がそんな顔するの。
「頼むから……そういうの、やめて、なるみ」