切ない春も、君となら。
【大丈夫だよ。まだ付き合ってから間もないし、すぐになかったことに出来るよ】


無理だよ。
なかったことにするなんて言わないでよ。酷いよ。
……でも、わざと酷いこと言って遠ざけようとしているのは分かるから、余計に辛い。

今、どんな顔をしているの? 何を考えているの?

会いたいよ。直接会って、教えてよ。


【じゃあな……また落ち着いたら連絡する】

「えっ、待って……!」

……私の制止の声に対し、少し戸惑った様な吐息が聞こえてきたと思ったけど、彼はそのまま通話を切った。

ツーツーと、無機質な通話終了を知らせる音だけが虚しく耳に響く。


私はそのまま、よろよろと教室へ戻った。


「春ちゃん! 近田君、何だって⁉︎」

教室に入ると、すぐに菜々ちゃんが駆け寄ってくれた。その後ろには基紀君、杏ちゃん、堀君もいた。


「えと……おばあちゃんの体調が悪いから転校するんだって……」

「それはホームルームで先生が言ってたでしょ。そうじゃなくて、本当にもう登校してこないの?」

「ええと……」



ーー別れよう。



その一言を思い出して、私の胸に再び突き刺さる。


夢じゃない。フラれちゃったんだ、私。



「……春ちゃん?」

菜々ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。


……もう、ダメ。



私はその場でボロボロと涙をこぼした。

菜々ちゃんが驚いた顔をして、他の三人も駆け寄ってくれる。


私は、総介君にフラれたことを四人に報告し、そのまま泣き崩れた。
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