【短編】 桜の咲く、あの日に
よん
   * * *


 最後にサキに会ったのは、中1。
 
 その年を最後に、サキはここに現れなくなってしまった。


 桜が咲いても、枯れても、何でも。


 ここにはもう、来てくれなかった。


   * * *


 今日、僕はずっとサキを待っている。


 公園に置かれた椅子に座って。



 何時間、経ったかな…


 普段僕がここに来ようと思うのは、サキの気配みたいなものが感じるからだ。


 行けば会える。


 そのくらい、僕とサキは見えない絆で繋がっていたはずなのに、ここ数年めっきり気配がしない。


 何年だろう。


 今僕は高3だから…、5年間?


 絶対おかしいって。


 何か、あったのかな……。



でも、僕がここにいれば、サキが来るんじゃないかって。


 根拠もない考えで、とぼとぼやってきた。



「そういえば、この椅子、出会った頃はなかったよなあ」



 ブランコではない、ベンチ風の茶色い椅子に座って、僕は呟いた。


 何か言えば、サキがそこに現れて、「そうだね」とか何とか、言ってくれるかもしれないと思ったから。



 だって、だっていつもそうだったじゃん。



 いつか昔は、


「なんで桜って毎年ちゃんと咲くんだろ」って言ったら、


「咲きたいからかな?」なんて悪戯に、返事くれたじゃないか。



 いつか昔は、


「咲いて散って、面倒臭くないのかな」って言ったら、


「それがないと桜じゃない気がする」なんて、何だか真面目に返事くれたじゃないか。



 ——いくら待っても、サキの声は聴こえなかった。



 燃え尽きそうな夕日が見える。


 もう、帰らないとだ。



 今日も僕は、サキに、唯一の友達に、



 ——会えなかった。
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